患者さんへ
- 当科で対応している病気について

当科で対応している病気について

腎臓内科はタンパク尿や血尿など尿検査異常や腎機能が低下した患者さんを治療する診療科です。以下のような患者さんはかかりつけ医に相談の上、是非当科にご相談ください。

  • 健診などでタンパク尿や血尿を指摘された。
  • 腎臓がだんだん悪くなってきた。(血液検査でクレアチニンがだんだん上がってきた。)
  • 両足がむくんでタンパク尿が出ている。
  • 検査で腎臓にのう胞がたくさんあると言われた。
  • 家族や親族に透析をしている方が多い。
  • 透析中の患者さんで定期検査をしてほしい。
  • 透析用のシャントの調子が悪い。

腎生検についてはこちら

保存期(透析をしていない)慢性腎臓病の患者さんへ

慢性腎臓病(CKD)はタンパク尿や血尿など尿の異常や腎機能低下が持続する病気です。日本人のCKD患者数は約1,330万人とされており、成人の約8人に1人はCKDです。CKDは心筋梗塞や脳卒中、心不全などの心血管疾患や、死亡のリスクを上昇させることが知られています。CKDが進行すると末期腎不全に至り、透析療法や腎移植が必要となります。

CKDの多くは自覚症状に乏しいのですが、血液・尿検査で診断が可能です。このため健康診断や医療機関での検査によってCKDを早期に診断し、適切な治療を行うことでCKDの重症化を防ぎ心血管疾患の発症を抑制することが重要です。

CKD治療には生活習慣の改善、CKDステージに応じた食事療法、血圧・血糖・脂質などの集学的な治療が必要です。当院腎臓内科では、かかりつけ医と連携しつつ、患者さんのCKDの進行抑制と合併症予防に努めていきます。

栄養指導

腎臓を守るために必要な食事療法について管理栄養士よりアドバイスさせていただきます。繰り返し受けていただくことにより腎臓病の患者さん自身で食事療法を実践できるようにお手伝いさせていただきます。

慢性腎臓病ステージと食事療法
慢性腎臓病のステージと食事療法
「慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014 年版 日本腎臓学会編」 より一部改変
栄養指導の様子
栄養指導

糖尿病透析予防指導(療養指導+栄養指導)

栄養指導に加え、糖尿病療養指導士や腎臓病療養指導士による療養指導を行います。このなかで患者さんの日常生活や運動についても指導させていただき、医師の診察だけではなく、看護師と管理栄養士も協力して、患者さんの腎臓を守るためのアドバイスをさせていただきます。看護師と管理栄養士が積極的に治療介入することは、一人ひとりの患者さんにあった治療法を提案できるため大変有効です。

療養指導の様子
  • 療養指導2

透析先延ばし入院(教育入院)

私たちは患者さんの腎臓を守るために腎臓病食を体験していただくことが重要だと考えています。慢性腎臓病や高血圧の患者さんは塩分6g未満の制限やタンパク制限の食事が必要ですが、外来で栄養指導を受けていただくだけでは実行することがなかなか難しいです。しかしながら短期間でも入院していただければ、きちんと管理された入院食で減塩や低タンパク食を経験することができます。患者さんによっては入院食の写真を撮ったりして自宅でも実行されています。入院中は栄養指導のほか、減塩教室にも参加していただき、腎臓病食について学ぶことができます。担当医からも提案があると思いますが、ご希望がありましたらお気軽にご相談ください。

減塩教室の様子
減塩教室
入院中に減塩教室を受講していただきます

末期腎不全の患者さんへ(腎代替療法選択)

慢性腎臓病が進行してしまうと、末期腎不全に至ってしまいます。そうなると腎臓は回復の可能性がなく、尿毒症という多彩な症状が出現します。そして高カリウム血症(不整脈や心臓が止まることもある)や心不全など重大な合併症を起こすことがあります。末期腎不全になりましたらご自身の腎臓の代わりになる治療法を決めなければなりません。これを腎代替療法といいます。

尿毒症の症状

腎代替療法の選択について

末期腎不全において腎臓の代わりを行う治療を腎代替療法といいます。腎代替療法には3つの方法があります。

腎移植
腹膜透析
血液透析です。

それぞれに特徴があり、いずれからも相互に移行可能な治療です。

腎機能が10%以下(eGFRが10 ml/min/1.73m2以下)になったらいずれかを考慮しなければなりません。

腎移植

日本における移植の現状

  • 腎移植を受けられる患者さんは年間1,600人前後で、2010年以降ほぼ横ばいです。
  • 移植の9割(約1,500人)が生体腎移植で、献腎移植(脳死者あるいは心停止者からの移植)は1割(約170人)程度です。

「2019臓器移植ファクトブック 日本移植学会」 より引用

献腎移植について

  • 献腎移植の場合、日本臓器移植ネットワークに登録していただきます。2016年末で約12,828人が登録していますが、移植までの待機期間は約15年です。

生体腎移植について

  • 生体腎移植の場合、ドナーは親族(三親等まで)に限定しています。配偶者もドナーになることができます。また、血液型が違っても移植は可能です。
  • ドナーは健康な成人であることが条件であり、悪性腫瘍や感染症の検査を受ける必要があります。
  • 移植までの待機期間は施設により異なりますが、多くの施設では登録後1年以内の移植が可能です。
  • 腎移植後のドナーは腎機能が術前の70%前後に低下しますが、それ自体で透析が必要な腎不全となることは稀です。
* 当院では腎移植を実施しておらず、近隣の大学病院を紹介しています。

こちらもご参考に「血液透析と腹膜透析の比較」

血液透析

  • 透析患者さんの90%以上を占める、もっとも一般的な治療法です。
  • 患者さんの血液を透析用の機械を使ってきれいにします。
  • クリニックに週3回通院し、1回4時間程度の治療を行います。
血液透析導入までのスケジュール

血液透析導入までのスケジュール

透析用の内シャント

  • 血液透析で血液を機械に送るための血管を手術で作成します。
  • 主に手首の近くで、動脈と静脈をつなぎ合わせます。

血液透析のメリット

  • 日本の血液透析の成績は世界的にもトップレベルです。
  • 夜間透析など時間帯を選んだり、送迎つきのところを選んだりできます。
  • 医療機関を受診すれば、医療従事者がすべての医療行為を行いますので、自分でやる必要はありません。

血液透析のデメリット

  • 透析中にいったん血をぬくため、気分が悪くなったり、足がつったりすることがあります。
  • 透析で血管を刺すため、痛みがでたり、出血したりする可能性があります。
  • 通院回数は週3回と多くなります。
  • 飲水・食事制限が必要です。
血液透析患者さんの1週間

血液透析患者さんの1週間

腹膜透析

  • 透析患者さん全体の3%程度と、割合はやや少なめです。
  • おなかの中に透析液を貯留し、腹膜を介して血液をきれいにするという治療です。
  • 毎日自宅で患者さんご自身が治療を行い、月1回程度の外来通院で条件を調整していきます。
腹膜透析導入までのスケジュール

腹膜透析導入までのスケジュール

腹膜透析のメリット

  • 毎日行うため体の負担が少ないです。
  • 通院は月1回と血液透析より少ないです。
  • 夜間だけの貯留など、生活に応じたメニューを検討できます。
  • 食事制限もありますが、血液透析よりゆるやかです。

腹膜透析のデメリット

CAPD (Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis: 連続携行式腹膜透析)

CAPDとは1日数回、おなかとバッグとの高低差を使って透析液を入れ替える方法で、この入れ替える操作を「バッグ交換」といいます。通常は自宅や職場などで行い、交換中はテレビを見たり読書をしたり、リラックスして過ごせます。バッグ交換の時間は生活や仕事のスケジュール、訪問看護や介護の都合なども考慮します。

連続携行式腹膜透析

APD (Automated Peritoneal Dialysis: 自動腹膜透析)

APDとは自動腹膜還流装置(APD装置)を用いて自動で透析液を入れ替える方法で、夜間就寝中でも透析液の交換ができます。APDの準備や使用する時間は、生活や仕事のスケジュール、訪問看護や介護の都合なども考慮します。

自動腹膜透析

血液透析と腹膜透析の比較

 

血液透析

腹膜透析

透析場所 医療施設 自宅・職場
透析操作 透析室スタッフ 患者さん自身
通院回数 週3回 月1~2回
治療時間 4時間程度 1日3~4回
手術 内シャント造設術 腹膜透析カテーテル挿入術
社会復帰 可能 有利
食事制限 重要 自尿があれば緩和
残存腎機能 早期に低下 保持されやすい
循環動態への影響 大きい 少ない

維持透析中の患者さんへ

当院腎臓内科では維持透析中の患者さんの合併症について、「透析合併症外来」で検査や治療をしています。また当科では透析シャントの修復も実施しています。何かお困りのことがある透析患者さんは、かかりつけ透析クリニックに紹介状を作成してもらい、「透析合併症外来」をご受診ください。