腎臓内科が扱う分野は腎臓生理や体液恒常性の維持メカニズム、急性腎障害・慢性腎臓病、腎糸球体・尿細管疾患、体液電解質異常、腎代替療法などがあります。
なかでも慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease, CKD)患者さんは1330万人と成人の8人に1人を占め、その中でも透析患者さんは33万人を超えております1)。また、電解質異常の一つである低ナトリウム血症は、急性期および慢性期ともに入院患者の15-30%に認められます2)。これらは腎臓内科医でなくても日常的に遭遇する病態であり、専門となる腎臓内科医でなくても、その病態生理、治療など基本的なところは、患者さんを治療する上で理解しておくべき重要な分野です。
そのため当腎臓内科教室では、医学部学生への卒前教育にも力を入れております。
医学科3年 ブロック授業
泌尿器科とともに「体液制御・泌尿器」として、腎臓の病態生理、腎炎やネフローゼなどの糸球体疾患、尿細管間質性疾患、二次性腎疾患、電解質・酸塩基平衡などを取り扱い、腎臓診療のパラダイムシフトなど最新の実臨床の視点を幅広く取り扱いながら、頻度の高い疾患は深く学べるプログラムを作成しています。また、large class PBLでは小グループで症例のディスカッションをし、各グループにテューターを配置して病態の理解を深めるようにしています。
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医学科4年 プロジェクトセメスター
東京医科歯科大学医学部医学科では4年生で約半年間学内学外で研究に専念するプロジェクトセメスターという期間があります。当腎臓内科学教室でも毎年1-4人程度受け入れています。大学院生とともに実際に実験をしながら腎臓内科学研究の最前線を実地で経験していただいております。
医学科4年 プレクリニカルクラークシップ(PCC)
プロジェクトセメスター終了後、5年生で臨床実習に出る前に3か月の間、少人数のグループで実践的、かつ総合的な学習を行っています。当教室は糖尿病内分泌代謝内科と合同で1週間の間に腎生検標本の病理診断や血液透析・腹膜透析の実際、主要症候の鑑別診断演習などの実習を行っています。
医学科5年/6年 クリニカルクラークシップ(CC)
病棟での臨床実習では、1斑4名の学生を4週間の期間で受け入れております。臨床実習中は実際に当大学病院に入院した患者さんを担当医とともに受け持ち、実臨床を学んでいただいております。
当科では、慢性腎不全管理、電解質異常、急性腎不全の鑑別診断および加療など腎臓内科の専門的な疾患のみならず、肺炎や心不全、血糖コントロールなど総合内科的な疾患も扱っており、総合的な視点から専門的な管理までさまざまな経験を積むことができます。
また、血液透析のブラッドアクセスとなる内シャント造設術やシャント血管PTA、腹膜透析カテーテル挿入術、腎生検など様々な手技を実地で見学することができます。1週間に1名新規入院患者を担当しカンファランスで発表していただくことにより、上記のような様々な腎臓内科疾患を深く学んでいただいています。医学科6年生での実習はすでに1年間臨床実習を終えていることからAdvanced Programとして上記に加え、血液浄化療法実習として血液浄化療法を1週間学んでいただいております。
1)エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018.日本腎臓学会
2)Joseph G.Verbalis, et al. Diagnosis, Evaluation, and Treatment of Hyponatremia: Expert Panel Recommendations. Am J Med. 126:S1-42. 2013.